普段BLを読まない人にも読んでもらいたい佐岸左岸先生『オールドファッションカップケーキ』

(C)佐岸左岸/大洋図書

『オールドファッションカップケーキ』の概要とあらすじ

『オールドファッションカップケーキ』は2020年に大洋図書(H&C Comics ihr HertZシリーズ)から発売された佐岸左岸(さがんさがん)先生の漫画です。佐岸左岸先生は2018年に『春と夏となっちゃんと秋と冬と僕』で単行本デビューし、本作は2作目です。佐岸左岸先生は画力の高さと日常を切り取った独自のストーリー性で注目されている、新進気鋭の漫画家です。

『オールドファッションカップケーキ』は昇進を望まず無難で平凡な人生を選んできた39歳の主人公サラリーマンが、同性の部下と暖かな恋に落ちるストーリーです。恋をする引力と今までの日常が崩れる不安とが丁寧に描かれた、大人の恋愛話になっています。

”寝て、起きて、仕事をする。それだけの毎日。” 「それだけの毎日」を好きで選んだ39歳の主人公・野末は、そつなく仕事をこなし物腰も柔らかく同僚からも大人気のサラリーマンです。容姿にも恵まれ異性から誘われる機会も多いですが、恋愛よりも平凡で労力を使わない人生を好み悠々自適なシングルライフを謳歌しています。

休日はデートで気疲れするよりも家でごろごろしていたいと望み、出世欲はおろか他人との必要以上の交流さえ望まないという側面を持っています。しかし実際はその人生に後ろめたさも感じていました。

そんな野末がある日ひょんなきっかけから、無愛想ながらも信頼が厚い部下の外川と今どきのカフェでパンケーキを食べることになり平凡な日常が変わりはじめます。

歯に衣着せぬ物言いの外川は、人生に消極的な野末の態度を「面倒臭いんじゃなくて こわいんでしょう、野末さん。」と見抜いて本人に言い放ちます。

期せずして自らの心を見抜かれた野末はそれをきっかけに外川に心を開きます。自らの消極性をおじさんだからと言い訳する野末に外川は「アンチエージング」を持ちかけ、週末ごとに話題のスイーツを巡る二人の交流が始まりました。

野末は新しい日々の中で取り繕わない本当の自分を取り戻し、それとともに今まで感じたことのない特別な感情を外川に覚えるのでした。

好きを言葉にできない大人のあなたにお勧めの作品

『オールドファッションカップケーキ』は、自分の気持に正直に生きることよりも「こうすればうまくいくだろう」と割り切ることを覚えてしまった大人世代に向けたラブストーリーです。

作品内では想いを伝える道のりがいかに長く重いものかが丁寧に描写され、正直な心で人生を選んだ先の幸福が描かれています。

恋愛関係や同性同士という問題に限らず、新しい人生に踏み出す時には誰しもが少なからず今までの自分を失います。大人になるに連れてそのリスクが重くなりますが、自分の心にふたをせずリスクを乗り越えた先に充実した人生が待っていることを語るのがこの作品です。

新しい恋愛に踏み出すエネルギーを失った全ての人が共感できる、暖かな内容です。年齢を重ねるにつれて臆病になる大人の心に寄り添い、背中をそっと押してくれます。

省エネ思考で生きてきた主人公の野末は、外川との新しい日々に戸惑いながらも忘れていた充実感に幸福を感じはじめます。

建前や下心のない正直な外川の振る舞いは、野末がいままで守ってきた自分のスタイルを揺さぶるものです。同性間の葛藤だけではなく、社会的な立場や将来への不安なども丁寧に描かれているので、普段BL漫画を読まない方にも読み応えがありお勧めです。

本編には性的な描写は含まれませんが、単行本にも収録された後日談ではその後のアダルトな二人も堪能できます。

オススメポイント

相手役の外川の人間力

野末に想いを寄せる外川の誠実で時に強引な人物像も物語の見どころです。ストレートに想いを伝えられない社会的な立場と、それでも人を愛してしまう情熱とに揺れる外川は、誰もが応援してしまいたくなるキャラクターです。

ぶっきらぼうでも素直に自分と向き合ってくれる外川の言葉に、野末は今までとは違う自分を見つけていきます。

王子様のようなキャラクターではありませんが、実直で真面目で時に少年のようでもある外川のまっすぐなセリフは読者の心を揺さぶります。

野末の部下である自らの立場をわきまえながら、一個人としての想いが募り随所随所で漏れ出る愛情表現も人間らしく思わず応援してしまいます。男性らしい下心もリアルに描かれていて、時折見せる外川の情熱とそれに戸惑う野末のやりとりも胸キュンどころです。

ドラマチックなハプニングではなく、会話の繰り返しが育んだ二人の関係性には確かな説得力があり、戸川に揺れる野末の様を通じて私たちも物語に引き込まれていきます。物語の後半で外川が想いの丈を語るシーンは必見です。

緻密で美しい状況描写

佐岸左岸先生の漫画の魅力は、画力の高さと質の良い会話の展開です。

ダイナミックな展開と大胆なコマ割りをセオリーとするBL漫画には珍しく、細かなコマ割りと日常的な会話劇を主軸とした物語の作りで、穏やかな日常の描写から二人の関係性が丁寧に語られています。

ワンシーン毎の情報量が多く、作品内の日常がまるでそこにあるように感じられるのが魅力です。39歳の会社員である野末が部下で同性の外川になぜ惹かれたのかが真実味を帯びています。

1話ごとに二人の距離が徐々に縮まるこの話は、運命的なラブストーリーではありません。かわりに日常の積み重ねこそが人の心を動かすことを語っています。

それぞれのコマにも人物の表情や動きが詳細に描きこまれていて、交わされる会話やしぐさのリアリティから物語の世界観はさらに強固になっています。四十路間近とは思えぬ若々しい主人公もリアルには存在し得ないキャラクターですが、佐岸左岸先生の描写力で生き生きとした存在感がもたらされています。画力の高さを生かした二人の食事シーンも見どころのひとつです。

文:五十嵐みゆき

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